学校に行けていない状態で高校受験を迎えることになったとき、多くのご家庭が最初にぶつかるのは「そもそも受験できるのか」という不安です。
結論から言えば、不登校であっても高校進学の道は複数あり、実際に多くの生徒が進学しています。ただし、通常の進路指導で前提とされている「内申点を積み上げて公立高校を受ける」というルートとは、取るべき戦略が変わります。
この記事では、制度上どうなっているのかを整理したうえで、選択肢ごとの特徴と、いま何から手をつければよいかを説明します。
まず押さえる:高校入試で見られるのは主に2つ
公立高校の一般入試では、原則として次の2つで合否が決まります。
- 調査書(内申書)——各教科の評定を中心に、中学校が作成する書類
- 学力検査——入試当日の筆記試験
この2つの比重は都道府県によって大きく異なります。調査書を重く見る自治体もあれば、学力検査の比重が高い自治体もあります。
不登校の場合に問題になりやすいのは調査書です。定期テストを受けていない、提出物が出せていないといった事情から評定がつきにくく、結果として不利になることがあります。
ただし、ここで知っておいていただきたいことがあります。
多くの自治体に「配慮の仕組み」が用意されている
欠席が多い生徒に対して、多くの都道府県で何らかの配慮措置が設けられています。代表的なものは次のとおりです。
- 自己申告書(自己PR書)の提出——欠席の理由や、その期間に取り組んだことを本人が説明できる書類。調査書だけでは分からない背景を伝えられます
- 学力検査の比重を高くする選抜方法——調査書の影響を抑え、当日の得点で判断する枠
- 面接や作文を重視する選抜——学力検査以外で本人を評価する方式
ただし、これらの名称・要件・適用範囲は自治体ごとにまったく異なります。「隣の県ではこうだった」がそのまま当てはまることはありません。
一次情報の確認方法
お住まいの都道府県の教育委員会サイトで、次の資料を探してください。
- 「〇〇県立高等学校入学者選抜実施要項」(年度版)
- 「入学者選抜における不登校生徒等への配慮について」といった通知
毎年更新されるため、必ず受験する年度のものを確認してください。この1点を押さえるだけで、取れる選択肢が具体的に見えてきます。中学校の進路担当の先生に「配慮措置の適用を検討したい」と伝えて、要項を一緒に確認するのも有効です。
進学先の選択肢を4つに整理する
「高校」と一口に言っても、実際には性格の異なる複数の選択肢があります。
1. 全日制高校(公立・私立)
平日の日中に通う、一般的な高校です。学力検査で十分な得点が取れれば、内申の不利を補える可能性があります。学力検査の比重が高い自治体・学科ほど、この戦略は有効です。
私立高校については、欠席日数の扱いが学校ごとに異なります。欠席日数に基準を設けている学校もあれば、当日の学力試験を重視する学校もあります。個別相談会で直接確認するのが最も確実です。
2. 定時制高校
夜間や午後から通う課程です。近年は昼間部を設ける学校も増えています。少人数で、さまざまな事情を抱えた生徒が在籍しているため、環境として馴染みやすい場合があります。選抜は学力検査に加えて面接を課すことが多く、調査書の比重は相対的に低い傾向です。
3. 通信制高校
レポート提出とスクーリング(登校日)で単位を修得する課程です。登校頻度を自分で選べるため、毎日通うことが負担になっている場合の現実的な選択肢になります。
公立の通信制は学費が抑えられます。私立の通信制はサポート体制が手厚い代わりに費用がかかりますが、通学コース・オンラインコースなど選択肢が多く、大学進学に対応したコースを持つ学校もあります。
4. 単位制高校・チャレンジスクールなど
学年の区切りがなく、必要な単位を積み上げて卒業する形式です。自治体によって「チャレンジスクール」「クリエイティブスクール」などの名称で、不登校を経験した生徒を主な対象とする学校が設置されています。選抜で調査書を用いない、あるいは重視しない設計になっていることが多いのが特徴です。
設置の有無は自治体によります。教育委員会サイトで確認してください。
学習面:何から手をつけるか
学校に行けていない期間があると、学習の遅れが不安になります。ここで重要なのは、遅れた分をすべて埋めようとしないことです。
優先順位は「積み上げ型の科目」から
教科によって、遅れの影響の出方が違います。
- 数学・英語——前の単元を理解していないと次に進めない積み上げ型。抜けを放置すると差が開き続けるため、最優先で戻る必要があります
- 理科・社会——単元ごとの独立性が比較的高く、短期間でも取り戻しやすい科目です
- 国語——読解は短期での変化が出にくい一方、漢字・語句・文法は独立して積み上げられます
限られた時間で得点を最大化するなら、まず数学と英語のどこでつまずいているかを特定し、その学年まで戻ることから始めます。中3の内容が分からない原因が中1の方程式や be動詞にあることは珍しくありません。
「どこまで戻るか」は自己判断が難しい
この「戻る地点の特定」は、本人や保護者だけで行うのが最も難しい部分です。分からない問題を前にしても、それが知識不足なのか、その前提となる単元の理解不足なのかは切り分けにくいためです。
学校の先生、教育支援センター(適応指導教室)、塾や家庭教師など、第三者に一度診てもらうと、戻るべき地点が明確になります。
1日の学習時間は短く始める
生活リズムが崩れている状態から一気に長時間の学習を始めると、続きません。1日15分から始めて、続けられたら伸ばしていく方が結果的に総量は増えます。
保護者の方へ
この時期のご家庭では、進路の話が本人にとって強いプレッシャーになることがあります。
お伝えしたいのは、進路の選択肢は思っているより多く、そして後から変更もできるということです。通信制高校から大学に進学する生徒もいれば、定時制で学び直してから全日制に転入する例もあります。高校受験は一度きりの分岐点ではありません。
また、中学校を欠席していても、中学校は卒業できます(校長の判断によりますが、出席日数不足を理由に卒業できないケースは一般的ではありません)。まずこの点を確認しておくと、不安が一つ減ります。
相談先としては、中学校の進路指導担当、自治体の教育支援センター、スクールカウンセラー、都道府県の教育相談窓口があります。いずれも無料で利用できます。
自宅学習を「出席扱い」にできる制度がある
意外と知られていませんが、自宅でICTを活用して学習した場合、指導要録上の「出席扱い」にできる仕組みがあります。文部科学省の通知(令和元年10月25日付 元文科初第698号「不登校児童生徒への支援の在り方について」)に基づくもので、調査書の欠席日数を減らせる可能性があります。
出席扱いとするための要件
通知で示されている要件は次のとおりです。
- 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること
- ICT機器やインターネット、郵送、FAXなどを活用した学習の提供であること
- 訪問による対面指導が定期的かつ継続的に行われること
- 生徒の学習理解度に基づいた計画的な学習プログラムであること
- 校長が対面指導や学習活動の状況を、定期的な報告などで把握していること
- 学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けられないような場合であること
- 学習成果を評価に反映する場合は、学校の教育課程に照らして適切であること
ここで見落とされやすいのが6番です。 この制度は「教育支援センターやフリースクールなどに通えない場合」を想定しています。まず公的機関の利用が検討され、それが難しい場合に自宅学習が対象になる、という順序です。多くの解説記事はこの条件に触れていないため、申請してから条件が合わないと分かるケースがあります。
実際に申請するには
手続きの入口は担任または学年主任です。次の順で進めます。
- 担任に「自宅学習を出席扱いにできないか相談したい」と伝える
- 学校側から校長・教育委員会に確認してもらう(判断するのは校長です)
- どの教材・サービスを使うか、学習記録をどう提出するかを決める
- 対面指導の頻度と方法を取り決める
認められるかどうかは最終的に校長の判断であり、同じ制度でも学校によって運用が異なります。断られることもあります。その場合でも、学習を続けた記録自体は自己申告書に書ける材料になります。
通信制高校を選ぶときの見極め方
選択肢として挙がることが多い通信制ですが、学校ごとの差が非常に大きい分野です。パンフレットでは分からない点を挙げます。
公立と私立で何が違うか
| 公立の通信制 | 私立の通信制 | |
|---|---|---|
| 学費 | 低い(年間数万円程度) | 高い(コースにより大きく変動) |
| サポート | 基本的に自己管理 | 手厚い場合が多い |
| 登校頻度 | スクーリングは決められた日程 | 週5日通学型からオンライン中心まで選べる |
| 進学支援 | 限定的 | 進学コースを持つ学校あり |
費用だけで公立を選ぶと、自己管理が前提のため単位修得が進まないことがあります。逆に私立の手厚いコースは費用が高くなります。「自力でレポートを進められるか」が最初の分岐点です。
説明会で確認したい4点
- 卒業率——入学した生徒のうち何割が3年で卒業しているか。この数字を出せない学校は慎重に検討してください
- レポートが進まないときのフォロー——誰が、どのタイミングで声をかけるのか
- スクーリングの実際の日数と場所——年間何日、どこに行くのか。宿泊を伴う場合もあります
- 学費の総額——授業料以外にサポート費・施設費がかかることがあります。就学支援金の適用後の実負担額で聞いてください
大学進学を視野に入れる場合
通信制は必要な学習時間が全日制より短くなるため、空いた時間を受験勉強に充てられるという利点があります。実際にこの形で難関大に進学する生徒もいます。
ただし受験対策は学校任せにできないことが多いため、進学コースの内容を確認するか、外部の学習支援を併用する前提で計画してください。
「今すぐ進学しない」という選択肢もある
体調や状況によっては、中学卒業後すぐに進学しない判断もあり得ます。その場合でも進路は閉じません。
- 高等学校卒業程度認定試験(高認)——合格すれば大学・短大・専門学校の受験資格が得られます。年2回実施され、科目ごとの合格が積み上げ可能です
- 翌年度以降の受験——高校入試に年齢制限はありません。1年準備してから受験する選択もあります
- 定時制・通信制への途中入学——学校によって編入・転入の受け入れ時期が複数回あります
急いで決めることが、結果的に長引かせることもあります。まず情報を集め、選択肢を並べたうえで判断してください。
中学校とどう連携するか
受験に向けて中学校と話す際、伝えておくと進みやすい事項があります。
早めに共有しておきたいこと
- 進学の意思があること——これが伝わっているかで、学校側の準備が変わります
- 受けたい学校の種類——全日制・定時制・通信制のどれを検討しているか。まだ決まっていなくても「複数を比較したい」と伝えれば十分です
- 配慮措置を検討したいこと——自己申告書の提出可否や、学力検査重視の選抜枠の有無を一緒に確認したい旨
- 家庭で学習を進めていること——教材名や進度を具体的に伝えると、調査書の所見に反映されることがあります
調査書について確認すべきこと
調査書は本人には開示されないのが原則ですが、「評定がつかない教科があるか」「欠席日数がどう記載されるか」は担任に確認できます。ここが分かると、志望校の選抜方法との相性を具体的に判断できます。
「評定がつかない教科がある」と分かった場合は、その教科の評定を必要としない選抜方法(学力検査のみ、面接重視、定時制・通信制など)を優先的に検討する、という判断につながります。
受験当日の配慮について
体調や不安が理由で通常の受験が難しい場合、自治体によって次のような配慮が用意されていることがあります。
- 別室での受験
- 保護者の付き添い
- 試験室への入退室時間の調整
これらは出願前に申請が必要なことがほとんどです。出願書類の配布時期に、中学校を通じて申請方法を確認してください。当日になってからでは対応できません。
診断書の提出を求められる場合もあるため、医療機関にかかっている場合は早めに相談しておくと手続きがスムーズです。
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よくある質問
Q. 欠席日数が多いと公立高校は受けられませんか?
欠席日数を理由に出願そのものができなくなることは、一般的にはありません。影響が出るのは調査書の評定を通じてです。前述の配慮措置や、学力検査の比重が高い選抜方法を確認してください。ただし制度は自治体ごとに異なるため、必ず受験年度の実施要項で確認してください。
Q. 内申点がほとんどつかない状態でも受かりますか?
学力検査の比重が高い自治体・学科であれば、当日の得点で勝負できる余地があります。また、調査書を用いない、または重視しない選抜を行う学校(定時制、単位制、チャレンジスクール等)もあります。志望校を1つに絞らず、選抜方法の異なる複数の学校を候補にしておくのが現実的です。
Q. 通信制高校を選ぶと大学進学は不利になりますか?
通信制高校の卒業資格は全日制と同じ「高等学校卒業」であり、大学受験資格に差はありません。実際に通信制から大学に進学する生徒は多くいます。ただし、通信制はカリキュラムの自由度が高い分、受験対策は自分で確保する必要があります。進学コースの有無や、外部の学習支援を併用するかを検討してください。
Q. 勉強を始めたいのですが、何から手をつけるべきですか?
数学と英語について、どの学年のどの単元でつまずいているかを特定することからです。学年に関係なく、分かるところまで戻ってください。中3生が中1の内容に戻ることは後退ではなく、最短ルートです。
Q. 本人が受験の話を嫌がります。
進路の話を持ち出すこと自体が負担になっている段階では、まず「情報を集めるだけ」に留めるのも一つの方法です。保護者の方だけで学校説明会や相談窓口を利用し、選択肢が複数あることが分かってから本人に共有すると、話が進みやすくなることがあります。
まとめ
不登校の状態から高校受験に臨む場合、押さえるべきことは3つです。
- お住まいの都道府県の入学者選抜実施要項を、受験年度のもので確認する——配慮措置の有無と内容は自治体ごとに異なります
- 選抜方法の異なる複数の学校を候補にする——全日制・定時制・通信制・単位制で、調査書の重みが変わります
- 学習は数学と英語から、分かる地点まで戻って始める——1日15分からで構いません
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